東京の登山用品店が「本気」を出して真面目につくった手ぬぐい

ようやくのブログを更新しました。簡単に書くことができないと思ってたら、余計なことを書きすぎて添削してたら深みにはまりすぎて今にいたります。思い入れが強すぎると逆に紹介しづらいというか、もうブログ書きたくないです。

そんな本題の前に、

雑誌「Pen」の公式サイト内「着る/知る」に店舗を紹介してもらってます。

https://www.pen-online.jp/article/013553.html

いつもとは異なる雰囲気で紹介してもらっているので、御覧頂けたらうれしいです。個人的にもうれしいです。

ではここから本番

既に店舗、オンラインでも販売は開始してますが、がんばって手ぬぐいを作りました。

山荘飯島オリジナル「東京の寅」手ぬぐい販売ページはここから

オンラインストアの商品掲載ページにもけっこう色々と書いてますが、まだまだ言い足りないことがありまして長文にお付き合いくださいませ。

ようするに自画自賛したい手ぬぐいを頑張って作ったから褒めてくれという内容です。とはいえ詳細を知らなくたって商品はとても良いものになってますので、疲れてしまうので読まなくてもいいかもしれません。自分の思い出として書くことにします。

手ぬぐいなんて正直なところ誰でも作れるでしょう。ちょこっと検索したらオリジナル手ぬぐいなんてのは出てきます。でも東京の登山用品店と名乗り、山荘飯島なのでただのオリジナルグッズとして簡単に作るということだけはしたくありません。

簡単に作れる時代だからこそ、誰にも気づかれないくらいのこだわりという部分が結局のところすごく大切だと考えてまして、先を見据えて信頼を得るためにもこんな考えでやってますということを、このオリジナル商品の手ぬぐいを通じて伝えたいとも思います。文脈をまたぐからこそ物の価値を正直に伝えることが重要なのですよね。

本当はそんな部分を語らない人がかっこいいのでしょうけど、我慢ができない山荘飯島なのでご了承くださいな。

まず自分はデザイナーでもなければ何かを作れる職人ではないということを伝えておきます。できないことを自覚することはとても大切だと思ってます。なので本気とは山荘飯島らしく幅広い文脈の人に響かせるべく、多くの人の力を借りて、きちんと説明ができる手ぬぐいを作ることにしました。

①なぜ、手ぬぐいか?
生い立ちみたいな話になります。

私が手ぬぐいに興味を持ったのは山をはじめたことがきっかけではありません。山をはじめたころは特に手ぬぐいに興味をもたず、山小屋でも買うことはしませんでした。

どのタイミングで興味を持ったかと言うと、当時、生地屋で倉庫番をしていた時に出会った先輩の影響が大きいです。

この生地を仕入れている会社ですね。ありがたいことに未だに付き合いさせてもらってます。山荘飯島では売れてないわけではないのですが、一部の生地はびっくりするくらいに売れないです。信じられないくらい良い生地なのでそろそろ自分用に仕立ててしまいます。

その先輩は今も色々な面で師匠的な存在なのですが、はじめての出会いが強烈でいまだに覚えてます。

仕立ての良いネイビーのスーツ
(しかもワンタック入りのパンツ*当時はノータック全盛期だったのでタック入りてのはかなり珍しかったのです。新卒で入った会社でタック入りのパンツを履いてたら、そんなの履いてるのはお前と部長くらいだなって笑われちゃうくらいな世の中でした。)

サスペンダー&白のワイシャツ&ペイズリー柄の深いバーガンディーのネクタイ

足元はアディダス SL72 ライトグレー

そして腰にはコルセットを巻いて・・・

何だったらネクタイは肩にブラ下げてるし!?

そんな服装の人が「よろしく」なんて握手を求めてきたわけです。

そしてその人の後ろポケットから覗いていたのが、端がほつれた山小屋の手ぬぐいだったのです。

仕立ての良い服と足元はアディダスのスニーカー。なのにコルセット&手ぬぐい(いやむしろ汚い?)・・・この人は只者じゃないぞ。

しかし、そんな手ぬぐいスタイルがかっこよく、興味をもったきっかけとなりました。

そんな感じで上手く説明ができない魅力ある先輩だったのですが、ちょうど登山を始めたての頃に出会い、実は山にも精通していたその先輩からは色々と教えてもらいまして、いまだに山荘飯島の考えにも生かされています。

例えば、山には命の責任を持てる人としか行かないというスタンスで、その会社が10人未満の小さな会社なので、同僚同士で行って万が一事故にあったら会社にも迷惑をかけてしまうよということで一緒に登山へ行くことはありませんでした。

*会社を辞めてから軽くハイキング的なのには連れていってもらったのですけどね。

ようするに山を舐めずに、登るからには万が一のことを想定して、責任をちゃんと持ちましょうという真面目で普通の考えを教えてくれたわけです。だから普通の真面目さだけは忘れないようにしています。

そんな人だったのだけど出張の度に絶対に忘れ物をしてきちゃうとかエピソードには事欠かない要注意人物だったりで、とにかくお世話になりました。

先輩の話だけで長くなりそうなので、手ぬぐいに話を戻すと、

私自身、社会人になってからちゃんとハンカチを持つようになったのですが当時はアメリカのバンダナか、イギリスもどき?の水玉のハンカチを愛用してました。500円~1,000円くらいで買えるやつです。

その後リネンが得意なアパレルメーカーで働いたので、ハンカチにしたらもったいない最高級なリネンハンカチを使ったり。

なので、平行して色々なハンカチを使って残ったのが手ぬぐいという感じです。

おかげさまで外出する際は手ぬぐいを持っていないと不安になる身体になってしまいました。

なぜ手ぬぐいに落ち着いたかというと、結局、圧倒的な吸水速乾性と気取らないでお洒落に見える部分でしょう。

一般的なハンカチより大きいのでどんなに頻繁に手を洗ったり、顔さえ洗って拭いても、布がびしょ濡れにならないので何度でも安心して使えます。ポケットに入れておいても乾くので、日常的に使いやすい。私の使い方が悪いのかコットンのふつうのハンカチは一発で濡れて終わる時もあったのでとにかく安心感が違います。

雨の日にはカバンや服を拭くこともできる。でも乾く。梅雨やゲリラ豪雨にも最適。

少し体調が悪い時はマスク代わりにもなる安心感

乾きやすいリネンのハンカチも良かったのですが、面積が大きくよりで使い勝手の手ぬぐいに軍配があがり、今に至ります。

急遽温泉や銭湯に行く際はタオル代わりに使い、濡れても絞れば何度でも身体を拭けるので、大きなタオルを持たなくてもこれ1枚ですますこともできます。(男性のみの話でしょうかね?)
なのでサウナ、銭湯文脈にもおすすめです。

先日泊まった山小屋で、初めて風呂に入る経験をしたのですが手ぬぐいで十分でした。濡れたら首に下げておけば薄手なので乾きます。

アウトドアブランドの化繊で薄手で軽く吸水性抜群のタオルなどももちろん知ってますし、とにかく機能的なのは分かりますし、むしろ買った方がいいと思います。でも日常でカッコよく後ろポケットから覗かせることはできません。タオル地のハンカチだとスーツに合わせることできません。なので手ぬぐいです。

これが手ぬぐいを使うようになったきっかけでありまして、山荘飯島のオリジナル商品を作るなら手ぬぐいを作りたいと当初から考えておりました。思い入れが強かったおかげで、中途半端なものを作りたくなく、ようやくの実現となったのです。

ようするに、ここまでは田窪さんのただの思い出話でした。

ここからが商品説明です。

②デザイン


山荘飯島のロゴを作ってくれた井上元太さんに依頼 @gentainoue
最高なデザインに仕上げてくれました。当然ですけど、デザイナーてのはやっぱりすごいです。

ロゴの時もそうでしたが、もちろん私なりにこんなデザインにしてほしいという案をものすごく考えた上で提案はさせてもらってます。その要素を汲んでくれつつ、想像を超えてものに仕上げてくれました。

なぜ寅かというと・・・

私が寅年で山荘飯島の「飯島」の由来となった祖母、いわゆる私のばあちゃんが寅年でした。寅が一緒だなとなんて小さいころから話していたので寅となりました。

カルチャー感、漫画っぽさ、日本ぽさもありつつ、チープなアジアのお土産ぽさっもある、逆輸入な日本な気もする。時代も古くも見えるし、新しくも見える。カッコつけ過ぎることは苦手な山荘飯島らしさもあります。ほっこり感も無いしね。

ロゴもそうですが、毎度大満足なデザインに仕上げてくれるので、とにかく元太さんには感謝です。

ロゴやこのデザインもいずれ何かに昇華します。ステッカーという声多数ですが、タイミングを逃し続けてめちゃくちゃ出し惜しみしていますのでご了承ください。

自分にはカルチャー感と東京感が乏しいということを自覚しており、それを補ってくれるイメージがあったので元太さんに依頼させてもらったわけですが、予想以上に山荘飯島を上に持ちあげてくれた気がします。おかげで「東京の」登山用品店を名乗ることができているのです。

このデザインだけで価値があるとまっすぐ自信をもっておすすめします。

〇濃い色


濃い黒と濃い黄色です。
黒は登山にNGかもしれないのであまり無いはずです。だからこそかっこいいです。

手ぬぐいという案を出させてもらった時に、イエロー地を考えていたのですが、逆に黒をメインしてくれたのはデザイナーさんの発想です。すごく失礼な言い方ですが登山をしないからこそ、純粋なカッコいい手ぬぐいを作りたいという発想で黒の提案。とても新鮮に感じました。

黒が色落ちしたらカッコいいよねという話に。

日差しを吸収すると言われる黒だし、ハチが寄ってくるなんてことも言われているので黒い山の手ぬぐいってあまりないのでしょう。とは言え、私が山をはじめた頃と比較しても黒いウェアはかなり市民権を得てきたように思います。ちなみに手ぬぐいのカッコよさに気づかせてくれた先輩は視認性という観点からも黒いウェアは山では着ていません。

そんな先輩の教えに反してしまうのですが、

手ぬぐいは色落ちします。生地的には問題無くても長く使うと手ぬぐいは色が抜けてきて、汚く見えてしまうときもあります。まあ消耗品でしょうからそんな時は雑巾などに利用したりして使えばいいわけです。

今回の手ぬぐいは濃い黒と濃い黄色です。

黒地が赤茶っぽくなってもいいし、灰色っぽく色落ちても良さそうです。長く使ったことを想定して黒。黒だけど黒じゃなくなった時に愛着も風合いも増して便利に使えるでしょう。濃い色のおかげでより長く使える手ぬぐいになってます。

長く手ぬぐいを使っているからこそ、長く手ぬぐいを使える色にしてみました。しかも他ではあまり見ない色です。

とは言え現状は私も長くは使ってないので想像の話だよとも正直に言っておきます。でも色落ちを楽しみながら長く使ってもらえたらうれしいです。

そして濃い色のおかげで汚れが目立たないのもありがたい。何も気にせずガシガシと長く使ってください。

〇生産
アパレルメーカーに勤めていた経験を生かしましょう。
登山文脈と洋服文脈の差?を言及すると生産工場のこだわった選び方のように感じます。別にこだわっていないわけではないし、製品も悪いものではないということもちゃんと言っておきます。(ちなみに毎度苦言みたいな話をしてますが、けっこうビビってブログに書いてますし、そこまで偏屈じゃないので店で会うとわりとフラットな優しい感じだと自分で言っちゃいます。)

でもそのこだわりを説明できるアウトドアメーカーや店は少ないように思います。例えばアパレルメーカーで働いていた時はただシャツの工場へ依頼をするというわけではなく、どこどこのシャツ工場のクオリティが良いから、どうにかしてここへ依頼するみたいな感じで、工場を選定していました。実際に同じシャツでも工場によって面構えが異なったのです。

一概には言えないのですが・・・

現状の新興アウトドアブランドは今のところ製品の形にするのがゴールで、その先の工場の選定はまだなのかなと勝手に思ってます(*新興と書いたのでは大手はやっぱり良い工場を確保していると思うからです。)もちろん新興アウトドアブランドの方が素材の選び方や、使い方の発想は面白かったりで、現にアウトドアブランド派生でその素材へ考えはファッションブランドへ流れてます。特にガレージブランドは自由な発想や万人受けしない尖った部分が素晴らしいと思います。そしてもう少し経ったら、工場の選定なんて部分も進歩していく雰囲気を感じるのは事実です。それだけ勢いありますしね。

こんなことを長く言っておきながら今回はただの手ぬぐいです。

何が言いたいかというとせっかくなら工場をちゃんと選んでみようと思ったわけです。そうすれば登山用品店というくくりならば、ただの店舗オリジナルブランドで終わらないと考えました。

さらにこれだけ言っておいてなんですが、私は縫製なんてできないので、実際のところ縫製できる人と比較すると本当の意味での質の良さを分かる目線は持ってないし、分かってません。

でも働いてきた中で工場と直接話をする機会もあり、感じたこととして工場は自分の腕の良さを知らない、当たり前だと思っている傾向があるので、そこの凄さが全く伝わっていない。

たぶん詳しい人ほどこの傾向があるように思いますし、だからこそ言及していないのでしょう。

私の適度な素人感と玄人かぶれが良い塩梅に作用して、ただの日本製という定型文だけでなく、できないからこそ、知らないからこそ必死に説明をさせてもらいます。素人だからこそ分かりやすく良いことを追求したいと思いました。これが山荘飯島の「本気」な部分です。

前置きが長くなりましたが、そんな考えを秘めながら


昔ながらの「注染」という技法を頑なに守り続けている、創業110年以上の栃木県宇都宮にある老舗手ぬぐい工場にて生産を「直接」依頼しました。

戦時中の日本軍の宿舎をそのまま移築した建物を未だに使っているとのことでこんな建物。でも数々の地震にも耐えてきてます。

染めた布を干すところ

栃木県の宇都宮は「宮染め」という名前が付くくらいに江戸時代から染め物が盛んな街でした。でもそんな宮染めも現在はこの手ぬぐい工場ただ一つ。伝統工芸、文化遺産ともいっていいような工場です。

そして私の地元は栃木で、飯島の由来となった祖父母も栃木。せっかくなら縁がある栃木県で作ろうという話です。

手ぬぐいの知識が無い分、無駄にこだわりをもつことからはじめてみました。

郷土愛、伝統産業、地場産業などなど・・・言い方次第で色んな説明ができます。ただのオリジナルグッズを作ったでは終わらせず、全文脈に幅広く響かせるための重要な要素です。

とは言え宇都宮が手ぬぐいの産地とは知らず、なぜ栃木のこの工場にいきついたかというと、

「東京の」登山用品店を名乗ってるので単純に東京で生産したいと考えてまして、いわゆる手ぬぐい屋さんに問い合わせみたところ、生産が東京ではないことが分かりました。(後々、東京生産もあることを教えてもらいました。)

じゃあ次は地元栃木を調べようという、とても単純な理由から栃木の工場へいきつきました。

それが冒頭で紹介した創業110年以上の工場だったのです。もはや全国的に手ぬぐい工場自体が少なく、現在も稼働している工場が栃木にあったのです。ちなみにこの工場は浴衣地も染めて作ってますが、これも非常に貴重で栃木より北には浴衣地を染められる工場はないのこと。

そして掘り進めて調べてみると、手ぬぐいの最高素材として「特岡」という生地があります。その「岡」は栃木県の真岡市が由来ということが判明しました。真岡で生産されていたから「特岡」に名前になりました。

せっかくなので、手ぬぐいを包む紙帯の裏に宮染めについて書いてますので、購入された方は読んでみてください。

まさに正統な手ぬぐいじゃないかということです。

これは洋服が好きな人の単純なところ。形から入る。伝統とか重んじてないし品質が良いのかは正直わかってない。でも発祥の地とか、初めて作られた場所とかそんなの大好きです。

こんな感じで様々な無駄なこだわりと説明しやすい言葉を見つけまして、栃木の工場へ依頼することに決めました。

そして工場へ直接行き、実際に話を聞いて作業を見ることでこんなブログを書くことができてます。
「注染」について理解を深めることができ、おかげで山の手ぬぐいが作ることができたのです。

さらに山荘飯島にとって工場と「直接」やり取りすることは詳細を知って知識を深める以外に、価格面においてもとても重要です。
商社やOEM会社を通じて簡単にオリジナル商品を作れますが、当然中間マージン的なものが発生するので原価が上がります。もちろん量が発注できるメーカーならそれでまったく問題ないし、メリットもかなりありますが、小さな店としては金額的にも規模やコストは死活問題です。とても高い手ぬぐいを作り、だたの自己満足に終わる可能性もあります。自分の努力次第で良いモノを価格が抑えることができるならば、がんばるしかありません。

実はここの工場を見つける前に見積りを数件とりましたが、やっぱり「直接」のメリットをとても感じています。

〇材料
最高級の手ぬぐい素材である「特岡」を使用
薄手でごわつかず、吸水速乾性も抜群。使いこむうちにより柔らかく馴染んできます。素材に関してはありきたりな説明ですが、登山用品店を名乗る店が作る手ぬぐいだからこそ、ちゃんとした素材を使ってます。

分かりやすく言えば、高級浴衣地に使われる素材です。特岡と注染の相性は夏の浴衣に最適なのです。

そして先に書いてますが、特岡の「岡」は栃木県の真岡市が由来
でも残念ながら今は真岡市では手ぬぐい生地を生産していませんでした。この生地の産地である愛知県で生産された最高級な「特岡」生地を使用しています。

とは言えこの由来を知っておくだけで、正統派な気がしますよね。
誰も気にしないだろう部分までこだわると、なんだか深みが出ると思います。たぶん・・・

〇注染
登山文脈の人は通気性が大好きです。通気性を数値化するくらいにこだわるならば、染の技法までこだわらないとだめでしょう。

注染は繊維をつぶすことなく染める技法=通気性を損なわないので、風通し良く特岡生地とあいまってより速乾性が増すのです。山荘飯島は登山用品店と言ってますから、ちゃんと山用の手ぬぐいをつくったわけです。

せっかくなので、注染の紹介を。
職人が1点1点手作りしているというようなたった1行だけで済ませることなんてできません。

1、型置き 糊付け

写真は作業の途中からですが、まずは晒し布を敷きます。

そして型を上に重ねます。

型の上から糊を塗ります。模様みたいになっているところには穴が履いてるので、そこから糊が落ちて布につきます。

模様に見えるのが糊

ようするにTシャツなどのシルクスクリーン印刷と同じ要領です。

この場合、糊がついてる部分が染まらないので、Tシャツとは逆ですね

そして手作業、目視で布を重ねます。

シワが出てももちろんだめ。柄の終わりがズレでもだめ。

すごく簡単に作業してましたが、大変な作業だと思いました。

そしてまた、型を落として糊を塗る。

この過程を繰り返します。ちなみに浴衣地も手ぬぐいも同様の作業です。

そしてこの画像は浴衣地ですが、よりこの作業の凄さと職人技が分かるので説明します。

総柄、柄続きに見えますが、折り重ねて何回も擦った結果がこれです。

指で差している部分にわずかに隙間が見えますが、目視と手作業なのにわずかなズレしかありません。そしてこのズレも一つの手作業のアジではあるのですが、この程度。熟練の技です。

1反12m分 ミスなく染めないといけません。こんな作業は震えますよね。

ここまでが糊付け。色を入れる前の基礎作りになります。

2、注ぎ染め

これが注染の染め方です。

染料を注いでいるので、繊維を潰すこと通気性を損なわずに染まるということが分かりますよね。

そしてこの染め方のおかげで布が重なっていても、表裏関係なくきれいに染まります。

山荘飯島手ぬぐいの裏側もばっちり染まってます。

この注染という技法が編みだされたおかげで一度に大量の反物が染めることができるようになりました。今でこそインクジェットなどの染め方もあるので、この技法は職人が丁寧に1点1点染めてますという表現にもなりますが、当時は画期的な大量生産の為の技法ということも面白いです。(手作業だけど比較的に安価に済ませられるのはこのためでもあります。)

ちなみに注染はせっかちな関西人が編み出した技法らしいです。関西だと重ねる量が関東の約3倍らしく、関東の方が丁寧だよなんていう説もあるみたい・・・(関西の方ごめんなさい。ちょっとおもしろく、関東の工場のプライドが見えた話だったもので書いちゃいます。)

動画を見ると、染料を注ぐ境目がはっきりしていない部分がありますし、注ぐ量も感覚でやっている雰囲気です。そして両手を使って二刀流で注いでいることに驚きますが、さらに驚くべきは足も使っている点です。

ようするにピアノの演奏をイメージしてください。

土台が波打ったり凹んだりしていますが、足のレバーを押して、下から吸引ポンプを作動させているのです。これで染める色を調整しつつ綺麗に裏側まですっと染まるのです。

全部熟練の感覚です。このくらい染料を注いだらこれだけ染まる。ここに別の色を注いだらこんな感じに滲む。足のレバーを踏むタイミングがずれるだけでも全然違う色味になってしまう。

職人が丁寧に染めて作っていますという言葉がこの動画だけでも伝わるはずです。

この画像だと、野菜のグラデーション部分が先ほどの染め方に該当します。この滲み方が注染ならではの特徴。凄いですよね。

さらに細かい部分なこんな感じで土手を作ります。ここに染料を注いでまわりが染まらないようにします。

染めた後は、ケーキ職人みたい感じで糊で埋めます。

塞いだ後に、染料を流す。

ちょうど出来上がりが干されていたので。

小さな点々だけカラフルに染まってます。店で並んでいても、綺麗だねで程度の感想で終わってしまうかもしれませんが、実は染めるのにこんな手間をかけているのです。

様々な手業によって、人間的な味のある染め上がりになるわけです。とは言え、熟練の手作業と感覚だけでこうも均一の仕上がりになるのかと驚かされる技術ですよね。

そして、染めた後は

3、洗い

機械で洗いをかけます。けっこう豪快に洗って糊を落とします。
こんだけ洗っても色落ちせず既に染まっています。なおさら染めは取り返しのつかない作業ですよね。

4、干す。

物干しで干したり。

この高いところから吊るして干します。浴衣地、手ぬぐい工場の風物詩らしいです。残念ながら見ることができなかったので、また訪問して確認したいところです。

5.整理&カット&梱包

手作業で巻き上げてシワを伸ばし、1枚1枚手ぬぐいの大きさにカットして畳んで仕上げてもらいます。

山荘飯島の手ぬぐいはさらにオリジナルの紙帯を付けてもらって、より高級感ある仕上がりにしてもらいました。

ここだけの話、寅の顔がひょっこり覗いて良い感じなのは実は偶然だったりします。紙帯とのバランスも良く、届いた出来上がりを見た時はとってもテンション上がりました。

そんな山荘飯島の手ぬぐいですが、グラデーションには染まってませんが工場から高く売った方良いとアドバイスを頂いた手ぬぐいです。

なぜ高いのかと言うと、その理由は工数の多さにあります。

具体的には以下のようにこの1~4までの工程を3回繰り返します。

①黒無地染め
まずは反物を真っ黒に染めます。

染めて、洗って、干す。

②白抜き1+黄色染め
真っ黒に染めた素材の色を抜きます。

ここで、色を抜かない部分の糊付けの為に、型(その①)が必要になります。

色の抜く箇所は、
・雲の部分(白のまま)
・寅の黄色い部分
・山荘飯島ロゴマーク

この上述した部分の色を一度、白く抜いてから、黄色で染めます。

抜いて、染めて、洗って、干す。

③白抜き2
寅の爪、顔の白い部分の色を抜きます。

ここで型(その②)が必要になります。

この爪の色の重なり部分は工程上、仕方ない部分とのこと。とは言え逆に良い感じです。

でも顔に関してはものすごく繊細なデザインに仕上げてもらってます。多少のズレは見えますが、注染の技法でここまで細かいのあまりお目にかかれません。

色が3色使い、型×2枚、通常の3倍工数がかかる染め方をしています。
さらに大変さを言及すると、染めた後の生地は縮んだりシワが寄ります。なので、縮んだ後に目視で型を合わせて染めることはものすごく大変だったのです。

すなわち、とにかく労力のかかる=コストのかかる作業をしてもらった上で山荘飯島手ぬぐいはできてます。

デザインを見てもらった時に、「これは大変だよ」なんて教えてもらってはいたのですが、現場を見るまでその大変さにピンときていなかったのも事実です。やっぱり現場を見たからこそ、これは大変だ、高く売るべき、ちゃんと説明すべきだと思いました。

制作秘話的なことを明かすと、当初のデザインでは寅は4匹いましたが、寅を減らしてほしいという工場からの依頼があり、そこを調整しながらギリギリのバランスでこのデザインに落ち着きました。おかげで、デザイナーさんにも何度もデザインを出し直してもらったのですが、快く対応してもらったことにも感謝です。

後々知ったことになりますが、本来はインクジェットや捺染という技術でおこなうべきデザインだったようですね。なので若干細い線は色ムラがあるのですが逆にこれが良い感じの仕上がりに。むしろこれだけしかズレてないのとびっくりするはずです。

でも、これも直接工場へ依頼したメリットです。(*工場側にとってはデメリットな話)

工場のことを理解したOEM先のデザイナーさんなどに依頼したら、工場に寄り添い、線も太くもう少し大味なデザインになってしまったかもしれません。ある意味で手ぬぐいに関して素人だったからこそ、工場の技術を最大限に活用することができました。アパレルの現場でもありますが、デザイナーの無茶ぶりって時に重要なのです。そのおかげで注染だけど他では見たことないデザインになっているのです。

ついでなのでざっくりと手ぬぐいの染め方の種類を説明します。
良い悪いではなく、知っておくと物の価値が見極めれると思います。

・インクジェット
カラフルで繊細な線が表現でき、安価に作れます。でもインクジェットだと繊維の上にインクがのるので通気性が損なわれます。繊維の穴が無くなるというイメージです。また生地の裏までは染まらず、裏表がはっきりしているのも特徴です。

理解した上で依頼するならば、悪いわけでは全くないです。

例えば、昨年行ったマインドトレイルのイベントで配布されていた手ぬぐいは安価な素材でインクジェットでプリントされてました。でもマインドトレイルの景品としての活用なのだから、これで十分。とってもうれしい景品でした。

・捺染
注染と並び、こっちも伝統的な技法です。版画みたいな感じで手擦りで染めて、色数も多く、細かい表現もしやすい。色落ちもしづらい。丁寧に1点1点擦るので、生産数が少なく、色がはっきりしている分より高級なイメージです。

じゃあ捺染の方がいいでは?となりますが、
注染は布本来の通気性が保たれます。そして裏まできれいに染まります。
*最近では裏も綺麗に染まる捺染もあるとのこと。

裏まできれいに染まるので、

ラフにストール的に結んでも、裏側の色の薄さも無いので安心して使えます。カッコつけたい山荘飯島にちょうどいい。

布本来の通気性と吸水速乾性が発揮できるので山の手ぬぐいにおいては最適です。
しかも色落ちを狙ったデザインなので、色落ちがあるおかげで黒い手ぬぐいが作れて、愛着があるものに仕上がります。

そして職人の技術を最大限に生かした上に、コストが抑えられるので現実的な価格で最高品質の素材とデザインを皆さんに提供することができました。

捺染と注染に関しては良し悪しあると思いますが、現実的な価格帯を追求したい「東京」の「登山用品店」である山荘飯島にとっては注染が正解です。

そして、正直に言うと染の技法で選んだという話は後付けです!

インクジェットのことは把握していたのですが、注染と捺染の違いは知りませんでした。これも工場に訪問して教えてもらった話。直接行くことで様々な恩恵を得ています。(捺染も調べるともっと色々と良さがあると思いますのが、そこは他の人にまかせますね。)

浴衣地に注染が多いのもこのためだと教えてもらいました。夏用なので通気性が大切。注染は快適です。

偶然ではありますが、注染の工場を選んだことで明確に吸水速乾性のある山の手ぬぐいとうたうことができるようになったのです。これはものすごい収穫です。

そして、真面目に工場を選ぶことで、日本製や職人という言葉の価値をあげることにつながると思います。

ブログだから正直に書いてしまうと、日本製とか職人が1点1点手作りでという説明はなかなか嫌いです。日本製の安売りです。私が今日、職人を名のり、ミシンを買って作ったものも日本製で職人が1点1点作ったものになります。友人が鞄作りの工場で働いていたので、その内情なんかも聞いたこともあります。

大切なのは生産地とかじゃなくて、その中身だと思います。

なので今回の手ぬぐいは日本製で、熟練の職人が丁寧に手作りをしていると堂々と言うことにします。

もちろん山荘飯島の手ぬぐいだけを作っている工場ではないので、この技術は他のメーカーの手ぬぐいにも使わていますのでこのブログを通じて今一度、価値を見直してもらえたらうれしいですよね。

そして、一体ブログはどこまで続くのか・・・?もう辞めたいです。マジで疲れました。

でもまだまだ続けねばならないので、がんばりましょう。

〇長さ 100cm
一般的な手ぬぐいは90cmです。この+10cmという長さが重要です。


大きな男性でも首や頭に巻いたり、ほっかむりも容易にできます。ちなみに剣道用の手ぬぐいは頭に巻くので100cm。そういった背景もあり安心して使える大きさです。

ストール的に使っても雰囲気良い長さです。


とは言え上記の理由から他のメーカーでも110cm以上のものなんかもありますが、私はかっこよく後ろポケットから覗かせて使いたいのです。最初に言及した先輩の影響です。

このわずかに覗いて見える柄の出方やたたみ方にまでこだわってこそですよ。


100cmという大きさはギリギリでポケットを膨らませ過ぎずに使える大きさだという考えに至りました。

とは言え、めちゃくちゃ苦しみぬいて決めた100㎝です。

温泉や銭湯での使用も便利
身体を拭いたり、洗ったりもこの+10cmのおかげで快適です。

〇2,500円という値段
手ぬぐいとしたら高価な方の価格帯かもしれませんが、山荘飯島はアイドルでもユーチューバーでも無いので、そこに価値を置いて高くしているわけではありません。

手ぬぐいとして2,500円以上の価値があります。明確に価格の説明ができることも長い目で見たら店としての信頼につながるすごく重要な要素だと考えます。

既に説明した内容ですが、簡単にその価値の説明をまとめると

・素材が最高級素材である愛知県産「特岡」

・大きさが100㎝ 通常の手ぬぐい+10なので、その分原価が高い。

・注染で型を2枚作り、3回の工程をかけて職人が手作業でつくっている。

例え同じ工場で生産されていてもちゃんとコストの差、価値の差が説明ができる手ぬぐいになってます。しかも直接依頼している分、コストを抑えた上での金額の算出。

ファッションとして振ったらもっと価格をあげることができたかもしれませんが、登山文脈に寄り添った価格としました。

これが山荘飯島が本気で作った手ぬぐいです。ようやくオリジナル製品の販売にこぎつけました。

ここまで説明して2,500円という価格は良心的だと思ってくれる方がいましたら、ぜひたくさん使ってください。使っていたら様々な人に目につくでしょうから山荘飯島の手ぬぐいを広めてください。

そんな広告込みで、様々な文脈の人に手に取ってもらいたい価格にしました。

手ぬぐいに対してここまで説明する店はないでしょうから、山荘飯島らしく真面目に説明をすることにしました。何もできないからこそ、本気を出す。おかげで他の商品の紹介ができてないです。大変です。

儲けることは重要だけど、せっかくなら価値あるものを売ることも大切したいと考えてます。そんな考えが伝わったらうれしいです。とは言えもちろん儲けたいので皆さん買ってください。たくさん作ったのでドキドキです。

最初にリンクを張りましたが、ここからは遠いのでもう一度商品購入ページのリンクを貼っておきます。

山荘飯島オリジナル「東京の寅」手ぬぐい販売ページはここから

綿100%
大きさ 幅35㎝×長さ100㎝

*端の処理はしていない一般的な手ぬぐいです。ほつれますが落ち着きますので気にせず使ってください。

*手染めの為、色ムラや染めムラなど個体差はあります。そういうものです。

堂々とした日本製

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